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高年齢労働者の労働災害防止に向けた事業主の実務対応ポイント

高年齢労働者の労働災害防止に向けた事業主の実務対応ポイント

少子高齢化が進む中、60歳以上の高年齢労働者は多くの職場で欠かせない存在となっています。一方で、厚生労働省の統計によれば、休業4日以上の労働災害のうち高年齢労働者が占める割合は年々上昇しており、転倒や墜落など身体機能の低下に起因する災害が多く発生しています。

こうした状況を踏まえ、厚生労働省では「高年齢労働者の労働災害防止対策に関する検討会」を設置し、2026年4月施行予定の労働安全衛生法改正に対応した大臣指針の策定を進めています。今後は、事業主に対し、高年齢労働者の特性に配慮した安全衛生対策を講じることが努力義務として求められることになります。


1.事業主に求められる基本姿勢

今回の検討会で強調されているのは、「高年齢労働者を特別扱いする」という考え方ではなく、年齢による身体的変化を前提に職場環境や業務内容を見直すという視点です。

これまでの一律的な安全管理ではなく、年齢構成の変化を踏まえたリスク管理が、今後の企業実務における重要なテーマとなります。


2.実務対応① 高年齢労働者を踏まえた安全衛生管理体制の整備

事業主には、職場の安全衛生管理体制の中で高年齢労働者の視点を取り入れることが求められます。具体的には、安全衛生委員会等において高年齢労働者の災害事例を共有することや、本人から業務上の不安や負担について意見を聴取する仕組みづくりが重要です。

小規模事業場で委員会設置義務がない場合でも、定期的な面談やヒアリングの実施など、実効性のある方法で意見を把握することが望ましいとされています。


3.実務対応② 作業環境・設備の点検と改善

高年齢労働者の労働災害で特に多いのが転倒事故です。そのため、事業主には作業環境の再点検が求められます。

例えば、

・床の段差や滑りやすさの確認

・照度不足の解消

・重量物の持ち運び方法の見直し

・作業動線の整理

など、比較的取り組みやすい改善であっても、災害防止効果は高いとされています。大規模な設備投資に限らず、日常的な職場点検の積み重ねが重要になります。


4.実務対応③ 健康状態・体力の把握と業務配慮

高年齢労働者については、健康診断結果の活用や日常的な体調確認を通じて、身体状況を把握することが求められます。その上で、無理のない業務配置や作業時間の調整、負荷の高い作業の分担見直しなど、個別配慮を行うことが重要です。

一律の年齢制限を設けるのではなく、「個々の状態に応じた配慮」を行う点が、今回の指針の特徴と言えます。


5.実務対応④ 教育・周知と職場内コミュニケーション

高年齢労働者本人への安全教育に加え、管理監督者や若年層への理解促進も重要な実務対応です。加齢による特性を踏まえた指導方法や声かけの工夫など、職場全体での意識共有が労働災害防止につながります。

また、体調不良や不安を申し出やすい職場風土の形成も、事業主の重要な役割とされています。


6.今後に向けたポイント

今後公表される大臣指針は法的義務ではないものの、労働災害発生時には安全配慮義務の判断材料として重視される可能性があります。事業主としては、「何もしていなかった」状態を避けることが重要になります。


【高年齢労働者の労働災害防止対策に関する検討会】

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_62749.html