事業主が講ずべきハラスメント対策について
2026/09/01厚労省が7月16日、「事業主が講ずべきハラスメント対策パンフレット」最新版を公表しました。
職場におけるハラスメントは、被害を受けた労働者の尊厳や人格を傷つけるだけでなく、心身の不調、休職・退職、生産性の低下、人材流出、企業イメージの悪化など、経営にも大きな影響を及ぼします。そのため、事業主には、パワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産、育児・介護休業等に関するハラスメントについて、防止措置を講じることが義務付けられています。
10月1日からは、カスタマーハラスメントと、求職者等に対するセクシュアルハラスメントについても、事業主による対策が義務化されます。これを機に、自社のハラスメント対策を総点検する必要があります。
事業主が講ずべき対策の第一は、方針の明確化と周知です。どのような言動がハラスメントに当たるのか、ハラスメントを許さないという会社の方針、行為者には就業規則に基づき厳正に対処することを明確にし、全従業員に周知します。正社員だけでなく、パート、アルバイト、契約社員なども対象です。また、派遣労働者については、派遣元だけでなく派遣先にも措置義務があります。
第二は、実際に利用できる相談体制の整備です。相談窓口は、単に担当者の名前を掲示するだけでは足りません。電話、メール、面談など複数の相談方法を用意し、相談担当者への研修や対応マニュアルの整備、人事部門との連携方法などを定めておく必要があります。「ハラスメントに該当するか分からない」という相談や、発生のおそれがある段階の相談にも広く対応することが重要です。
第三は、相談があった場合の迅速かつ適切な対応です。相談者と行為者の双方から事情を聴き、必要に応じて関係者への聞き取りやメール、録音などの客観的資料を確認します。その際、最初からどちらか一方の言い分を事実と決めつけず、公平に調査することが欠かせません。事実が確認された場合には、被害者への配慮、行為者への懲戒その他の措置、職場環境の改善、再発防止研修などを行います。事実を確認できなかった場合でも、必要に応じて方針の再周知や研修を実施します。
また、相談者、行為者、協力者のプライバシーを保護するとともに、相談したことや調査に協力したことを理由とする解雇、降格、不利益な配置転換などを行ってはなりません。
カスタマーハラスメント対策では、顧客等からの暴言や過度な要求に対し、労働者を一人で対応させない、管理職へ引き継ぐ、一定の場合には退店を求める、電話を終了する、警察や弁護士へ相談するといった対応方針をあらかじめ定めておくことが求められます。求職者等へのセクシュアルハラスメント対策では、採用面談の場所・時間、SNSでの連絡方法、複数人で面談するなどのルール整備が必要です。
ハラスメント対策は、規程や窓口を設ければ終わりではありません。定期的な研修、相談窓口の周知、対応手順の訓練、社内アンケートなどを通じて、制度が実際に機能しているかを継続的に確認することが大切です。

